●GIDとは

性同一性障害(Gender Identity Disorder:GID)とは「生物学的性別(sex)と性の自己認知(gender identity)が一致しないために、自らの生物学的性別に持続的な違和感を持ち、反対の性を求め、時には生物学的性別を自分の性の自己意識に近づける ために性の転換を望むことさえある状態をいう」と定義されています。

一言で言えば、体の性と心の性が一致していない状態です。

原因は現在のところは不明です。生まれてから正しい性別が獲得できなかったのではないかという説、胎児期の障害という説などが出ていますが、現在のところ確定できる原因はありません。

自分は性同一性障害ではないか?と判断する大きなポイントとして

自分の性別に対する不快感・嫌悪感

例)自分の性器が間違っている、第二次性徴への著しい嫌悪感

反対の性別に対する強く持続的な同一感

例)反対の性別になりたいと考え、反対の性別としての服装、遊びなどを好む

反対の性役割を求める

例)家庭、職場、言葉遣い、身のこなしなど、さまざまな場面で反対の性別としての性役割を演じることを希望し、そう振る舞う。

などがあります。

●治療とガイドライン

治療は大きく分けて精神的治療・身体的治療になります。

治療の進め方として日 本精神神経学会が作成した「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」があります。法的なものではないので必ずしもガイドライン通りに治 療を進めなければならないというわけではありませんが、ガイドラインに沿った治療は望ましいといえるでしょう。

ガイドラインでは、精神科領域の治療は必須 です。精神科領域の治療の後に身体的治療に移ります。
身体的治療はホルモン療法、乳房切除術(FTMのみ)および性別適合手術などがあります。
当事者にとって最適の治療となるために、いずれの治療法をどのような順序でも選択できるようになっています。

精神科領域の治療

身体的治療への移行を前提とする場合は2人の精神科医の診察を受け、性同一性障害であることの診断と、身体的治療への意見書を2通 作成してもらいます。

診断と意見書作成に必要なこととして、生育歴、家族歴、周囲の理解、現在の状況等の聴取が主になります。通院の回数に決まりはなく、必要な情報が得られるまで行います。
身体的治療に移行するために、身体的性別の診断(FTMは婦人科医、MTFは泌尿器科医によって行われます)、染色体 検査、ホルモン値の測定を行い、検査結果は文書で入手しておきます。

2通の意見書と身体的検査の結果を元に判定会議にかけます。「身体的治療への移行」の承認が出たら身体的治療が開始できます。

身体的治療(ホルモン療法、乳房切除、性別適合手術)

1. ホルモン療法

18歳以上であることが条件ですが、18歳以上であっても未成年者は親権者などの法廷代理人の同意を得ることになります。

MTFの場合、エストロゲン製剤やゲスタゲン製剤を投与します。

  1. 筋肉注射(プロギノン、ベラニンデポーなど)
  2. 経口剤(プレマリン、プロギノン、スピロラクトンなど)
  3. 貼付剤(エストラダームなど)

期待される効果→乳房の増大、体毛やひげの現象、肌の女性化、体脂肪分布および骨盤周囲の脂肪分布の変化、頭髪の増加、はげの改善、筋肉の減少があります。
副作用および合併症→血栓症、心不全、心筋梗塞、脳梗塞といった血管系の障害、肝機能障害、貧血、頭痛、めまい、乳頭の過敏症、乳輪色素沈着、乳癌、精巣や前立腺の萎縮、性欲の減退、夜間勃起の現象、生殖機能の喪失などがあります。

FTMの場合、アンドロゲン製剤を投与します。

  1. 筋肉注射(エナルモンデポーが主。接種間隔には個人差があります)

期待される効果→月経停止、男性型体型、乳房萎縮、筋肉肥大、陰核肥大、声の低音化、性欲の亢進などがあります。
副作用および合併症→、肝機能障害、著名な体重増加(血清コレステロールの上昇)、多毛、色素沈着、皮膚の乾燥、にきび、頭髪の現象、生殖機能の喪失などがあります。

2. 乳房切除術(FTM)

18歳以上であることが条件ですが、18歳以上であっても未成年者は親権者などの法廷代理人の同意を得ることになります。

3. 性別適合手術

20歳以上が条件です。性別適合手術に関しては2通の意見書が再度必要となります。
MTFの場合:精巣摘出術、陰茎切除術と造膣術および外陰部形成術
FTMの場合:卵巣摘出術、子宮摘出術、尿道延長術、膣閉鎖術(第一段階)
陰茎形成術(第二段階)

どの治療法においても、十分な説明を受け理解の上、定期的な診察を受けながら、主治医と相談し治療を勧めてください!!